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展示情報

​中華民国第二十一回国際版画ビエンナーレ

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「金賞」 After that'22 - prisoner 9  / エングレーヴィング(プラスチック版) 

この度、版画の国際コンペティションである中華民国第二十一回国際版画ビエンナーレにて金賞を受賞いたしました。

https://printbiennial.ntmofa.gov.tw/w/print21EN/News_24060709390335855

 

歴史ある国際コンペで最高賞を受賞したことはこの上ない名誉であり、応援して頂きました皆様に心からお礼申し上げます。

 

版画は様々な版種(木版画・銅版画・リトグラフ・シルクスクリーン・デジタルなど)があり、それぞれ多様な技法があります。その多彩な表現は作品を制作しても、鑑賞しても楽しく豊かさを感じさせます。そんな版画の魅力や刺激を通じて、たくさんの仲間、先生、生徒、応援して頂いた方々と出会い、家族や両親の支えの中で自身の表現を培ってきたことが今回の受賞に繋がったと感じています。

 

私と版画について紐解いていくと、山口県防府市の出身の私は牟礼南小学校で紙版画や木版画を図工で学び、国府中学校ではプラスチック板に針で彫っていく凹版画を美術で学びました。福岡教育大学・東京藝術大学では銅版画を専攻し、現在は新宿の銅夢版画工房で銅版画を教えています。

私の作品は1.5mを超える巨大な作品が特徴です。線の集積によって表現される版画はその手数の多さからミクロコスモスとも評され、身近なものでは紙幣も版画によって刷られています。しかし、1.5mを超えるような版画は時間も体力もお金も当然かかってきます。それを成すには、身につけた版画の版種や技法を俯瞰し、何をすれば表現できるか、そして何をしなければ表現できるかを考える必要がありました。そこでたどり着いたのが、国府中学校で学んだプラスチック板を使った直刻法(ドライポイント・エングレーヴィング)でした。1.2mm厚のプラスチック版を壁に立て掛け、針やカッターナイフや彫刻刀の力加減で様々な凹部を集積させ画面を作っていきます。完成の段階で版をプレス機に通して紙に試刷りを重ね、加筆・修正をさらに重ね、最後に本刷りを行います。その後、紙と紙を繋ぎ貼り、表現したい大画面を完成させます。

この方法で私はこれまで困難だった、しかし表現したかった大画面の版画制作に尽力し、多くの大作を生み出すことができました。プラスチック板を用いた直刻版画はこれまでもありましたが、椅子に座り机に向かって制作するこれまでの版画制作のスタイルから、版を壁に立て掛けて動きながら制作していく私のスタイルはこれまでになかったと思います。

私の作品は壮大な風景や建築物のイメージが強く、大画面での表現というのは自然な試みだったのです。それは山口県防府市の大平山を望む中で育った私の境遇に導かれているのかもしれません。画面に近づいて対象を綿密に描き、かたや画面から遠ざかり全体を見渡しイメージと対話していく動線の繰り返しは、福岡教育大学時代の恩師で画家の滝純一先生の面影と重なります。人生の途上で点在した経験や出会いが一筋の軌跡となり、今に至っているんだなと深く感じています。

さて今回受賞した中華民国第二十一回国際版画ビエンナーレですが、台湾国立美術館にて作品が展示され、2024年7月27日には開会式・表彰式が行われ、10月13日に閉幕となります。現地には妻と息子とともに滞在し、妻にはいつも支えてくれている感謝と労いを、息子には点在する経験の一つになればと思っております。

私の軌跡はこれからも続きますが、どこかで誰かの点になり次に繋いでいく努力も心掛けていこうと思います。私の所属する日本版画協会や銅夢版画工房には若く志のある作家がたくさんいます。困難な時代ではありますが、私の経験や活動、そして作品が誰かの制作のヒントや支えになれば、私と出会い、育ててくれた人への恩返しにもなると信じています。

 

まだまだ道半ばですが、志高くこれからも版画に邁進してまいります。何卒応援のほどよろしくお願いいたします。


 

安河内 裕也

 

1985年 山口県出身

福岡教育大学卒業

東京藝術大学修了

第35回全国大学版画展  /収蔵賞

第6回藝大アートプラザ大賞展  /受賞

第15回中華民国国際版画ビエンナーレ  /銅賞

第82回日本版画協会版画展  /新人賞

第4回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ  /奨励賞

第84回日本版画協会版画展 /準会員優秀賞

第7回ガンラン(中国)国際版画ビエンナーレ /受賞

藝大アートフェア2023  /佳作賞

第21回中華民国国際版画ビエンナーレ  /金賞

現在、日本版画協会会員、銅夢版画工房講師


 

その他、トルコ、マカオ、イタリア、カナダ、ポーランド、スペイン、フランス等の国際展出品。毎年、東京藝術大学の藝大アートプラザ招待展、東京都美術館の日本版画協会版画展、新宿のアートコンプレックスセンターのグループ展に参加。

 

HP : https://hiroyayasukochi.wixsite.com/the-artist-jp

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中華民国第二十一回国際版画ビエンナーレ : https://printbiennial.ntmofa.gov.tw/w/print21EN/Introduction

日本版画協会 : https://hangakyoukai.com/

銅夢版画工房 : http://doumuhanga.jp/

アートコンプレックスセンター : https://www.gallerycomplex.com/

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